インタビュー 2013年12月30日07時30分

【インタビュー】工藤夕貴、不良娘の母親役で改めて自分の両親の気持ちがわかった


【インタビュー】工藤夕貴、不良娘の母親役で改めて自分の両親の気持ちがわかった

「不思議な縁やつながりを感じる」映画と工藤夕貴

 津軽のりんご農家を舞台に、14歳の少女の思春期と壊れかけた家族の絆の物語である短編映画『りんごのうかの少女』(監督:横浜聡子/配給:リトルモア)に出演している女優・工藤夕貴(42)。

 1989年に公開されたジム・ジャームッシュ監督のオムニバス映画『ミステリー・トレイン』の中の1編である『ファー・フロム・ヨコハマ』以来、24年ぶりに俳優・永瀬正敏(47)との共演が話題になっている。

 舞台となっている津軽は07年に逝去した実父で歌手の井澤八郎さんの郷里であることや14歳という多感な時期の家族との関係。さらに、現在、静岡県富士宮市に生活の拠点を移し、農業を行っていることなど、工藤さんとの「不思議な縁やつながり」を感じる点も多い。「横浜聡子監督の才能と脚本に惚れ込んで」出演を決めたという、この映画への想いを聞いた。

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 元々、横浜監督は大好きだったので、一度一緒に仕事をしてみたいと思っていた。ところが、そんな思いを度外視するほど、台本を読んだ時に衝撃を受けたという。
 「『なんじゃこりゃ!?』と、いい意味で驚きました。なんて面白い台本なんだろうと思ったんです。日常的なのに非日常的で、非常に惹かれたんです。自分が出ていなかったら、後で必ず後悔するので、すぐに、『是非!』という感じでした」と、約1年前を振り返った。

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 台本を読み、出演を即決した時は、前作の主演映画『カラカラ』(クロード・ガニオン監督)がモントリオール国際映画祭で賞を獲るかどうかという状況で、現地入りしていた。しかも、一度、帰国してから、すぐドイツロケが入っており、そこから帰国して2日後にクランクインという超タイトスケジュールだった。
 「体力的にも心配でしたけれど、天候の影響で飛行機が飛ばなかったら、クランクインの初日に間に合わないというギリギリの状況」にも関わらず、「出る」と、決意させるほどの内容だった。

【インタビュー】工藤夕貴、不良娘の母親役で改めて自分の両親の気持ちがわかった

言葉に出来ない心の中の思いをどう伝えるか悩んだ

 工藤の役どころは、青森県弘前市の岩木山の麓でリンゴ農園を営む一家。不仲の母と祖母、仕事もせずに酒ばっかり飲んでいる父に嫌気がさし家出を繰り返す14歳の娘の母親役。
 「私の役は、感情表現が上手じゃない役なんです。旦那のことも子供のこともすごく愛しているのに、それを上手に表現できなくて、自分でもどうしていいいのかわからない。イラつきをどうしようもなく抱えているという主婦の役です。毎日、やることはたくさんあって、朝から働きづめじゃないと生活が出来ない苦しい状況の中で、さまざまなことに半分以上目をつぶり、毎日毎日生活している女性です」

 東北人特有の口下手さに加え、現代女性のように、物事をストレートに言わない、ちょっと昔気質の女性像。それだけに、セリフとしては明確なものがない分、表情やちょっとしたしぐさで、いろいろと表現しなければならなかったという。
 「不器用な中にも、愛情があるものが伝えられないジレンマをどうやって、娘やちょっとしかない夫婦の間柄の中で表現できるのかを考えたり、想像力を膨らませなければならなかったです。ともすれば、ガミガミうるさいだけの主婦なんですけど、決してシーンの表には出ないけれども、そうじゃない心の中の折り目というか表情を観ている人たちにどう伝えるかというのが難しいところでした」

 工藤は、12歳で芸能界デビューしたが、当初の数年間は、「歌手・井澤八郎さんの娘」という事を隠して芸能活動をしていた。14歳の時には、相米慎二監督の『台風クラブ』に主演し、アイドル歌手でありながら、若手実力女優としての地位を確固たるものにした。その一方で、父親とはさまざまな事情から不仲となった時期もあった(晩年和解を果たした)。それだけに、14歳の娘の気持ちが分かるのではないだろうか。また、今回の舞台となった青森県弘前市は、父親の伊澤八郎の郷里であるなど、共通点も多いが、そのあたりの気持ちについて。
 「気持ちわかったりします。私がこの役だったんじゃない?と言う感じでした。自分で母親役やりながら、『私はこっち(14歳の娘役)じゃないんだぁ』と思いました(笑い)。こういう気持ちで親が自分を見ていたんだろうなという感じがしました。私自身が親に慣れていないので、感覚は子供のままだと思うんですけど、ちっとも成長していないような気もするし、何で大人がオフビートじゃなきゃいけないんだろうと思うこともあります。自分の親ってこんな気持ちで私と接していたのかしらと、母親が通ってきたことを考えたりしました。
 (また、今回の映画は、)自分の父親から与えられたチャンスだったのかなと思うこともあります。親子関係の不器用さを東北の全編津軽弁で演じたんですけど、その中に流れているものを感じながら、やはり、自分の父親も東北人だったんだろうなぁと。伝えたいことが伝えられない不器用さを持っていたんだろうなぁと思いました。すごく器用そうに見えて、きっと本当に思っていることはなかなか表現できないという硬さ、不器用さを持っていたんじゃないかなぁと。ちょっと不思議な感覚になりました。これって亡くなった父親からのメッセージなのかなぁと思いました」

【インタビュー】工藤夕貴、不良娘の母親役で改めて自分の両親の気持ちがわかった

「自分が出なかったら後で後悔する映画」と惚れこんだ

 今回の作品では、24年前の『ミステリー・トレイン』では恋人同士だった永瀬正敏と夫婦役での共演となっているか。
 「渋い再会でした。あんなに自由だった17歳の私たちが、何十年か経つと、こうやって世知辛い夫婦になり、問題児を抱え、お互い会話もなくなっているというのが、人生のいろんなことを経験してきた人たちの実生活とオーバーラップするところがありましたので、『人生って世知辛いね』という話をしました。シーンはほとんど一緒じゃなかったんですけど、いくつか重要なシーンがあって、そういうシーンでは、初対面の人では、葛藤がありながらも、関係性があるという空気感を出すのは難しいと思うので、旧知な永瀬くんでよかったかなと思います」

 最後にあらためて、映画の見どころについて。
 「どんな人でも必ず何かを振り返れる映画です。親であれば自分の子供との間を、子供だったら親との葛藤を振り返ってみたり、人の心の中に存在する共感を呼び起こす作品だと思う。一番身近な家族だからこそ、一番ドラマになるような感じがするんですね。繰り返し言っているように、日常の中の非日常。そういうものにこそ本当の人生のドラマがあるんだなぁと劇場で感じていただければと思うし、親子がなければ人間は存続していくことができないので、家族の在り方を感じ直す時間を作ってもいいんじゃないかと思います。
 普通の家族ものとこの映画が違う点は、決して押しつけがないとこですかね。こうあるべきでしょうという押しつけが一つもない。そのままで流れていく映画です。これから後にこの子がどうなるのか、母親がどうなるのかは、お客さんが決めることであって。そこが素敵な映画。作り手側の理想が直接的に、こうあってくださいと投げかけるところが多い。誰にもそれを投げかける映画ではなく、自分が何を感じるかを投げかけていく映画。感じて考えて。母親とかかわっていきたいのか。反抗期の子供。自分自身も大人になりきれない。見ることによって、どう家族とかかわっていきたいかを感じられる映画だと思います」

 なお、映画の舞台あいさつの記事は(http://newslounge.net/archives/107003)をご覧ください。

 

【インタビュー】工藤夕貴、不良娘の母親役で改めて自分の両親の気持ちがわかった

父親の思いを理解するために「亡き父から与えられたチャンス」